

北海道を代表する名湯を有する定山渓温泉街にて、9月1日(火)より新しい移動体験を提供する実証事業が開始された。
導入されたのはブレイズの四輪電動ミニカー「EV CLASSIC(EVクラシック)」とBRJの三輪電動シートボードの「TOCKLE」。運用開始に先立ち8月31日(月)に開催された「定山渓回遊モビリティ実証事業」記念セレモニーには、札幌市副市長や市議会議員、定山渓観光協会関係者のほか多数のメディアが集結した。
本記事では、定山渓温泉街における課題のひとつ「回遊性向上」を目指す同取り組みについて、札幌市経済観光局 観光・MICE推進部 観光・MICE推進課に聞いた思いや今後の展望を紹介する。
年間120万人が訪れる温泉地・定山渓温泉

定山渓温泉街は、年間120万人が宿泊する道内でも人気の温泉地である。源泉は56カ所、60~80℃の湯が毎分8,600リットルも湧き出す定山渓温泉。その歴史も古く、開湯は1866(慶応2)年、修験僧・美泉定山(みいずみじょうざん)が、湯治場を築いたことから始まった。その泉質はナトリウム塩化物泉で、無色透明でまろやかな塩辛さを特徴に持つ。国内で人気の泉質のひとつで、さまざまな効能が期待できるのも嬉しいポイントだ。
また、札幌市内から車で1時間弱という立地にありながら、定山渓のシンボルである、長さ23m、幅1.5mの真っ赤な吊橋「二見吊橋」、

四季の移り変わりの中で表情を変える滝の美しさが人気の「白糸の滝」など、周辺には豊かな自然が織りなすさまざまな観光スポットが存在しているのも魅力のひとつである。

札幌市経済観光局 観光・MICE推進部 観光交通対策担当 三浦雄平係長は、「少し足を延ばした観光も楽しめるのが『EV CLASSIC』の魅力です。定山渓には、魅力的な景勝地や観光スポット、飲食店等がエリア内に点在しています」と語る。


「『EV CLASSIC』を利用した観光では、足を延ばして、ぜひ『定山渓ダム』や『さっぽろ湖』の絶景を見に訪れてみてください。


また、三輪電動シートボードの『TOCKLE』での観光は、近場の足湯・手湯巡りや、

お洒落で美味しい飲食店等が集う『山ノ風マチエリア』へのアクセスもおすすめです」(三浦係長)
風を感じながら巡る絶景や足湯巡り、魅力あふれる街歩きの景色——。詳しい温泉の効能、観光スポットについては、定山渓観光協会公式サイトを覗いて、旅のプランを膨らませてみてほしい。
徒歩観光の課題を解消する回遊性向上の狙い
一方で、温泉街に点在する観光スポットへの移動は徒歩が中心となることが多く、観光客の回遊性向上が課題のひとつとなっていた。現在、温泉街と周辺の観光拠点を結ぶ交通手段は限られており、そのひとつである路線バスも、運転手不足等により運行本数が減少している。また、クルマ移動の観光客にとっても、利用できる駐車場が不足しているのが現状だ。
こうした中、札幌市は今年3月に「第2次定山渓観光魅力アップ構想」を策定。定山渓温泉街を含む定山渓エリアにおける、今後10年間の観光に関する取組の方向性を示したところである。その中のひとつに、交通利便性の確保による観光客の回遊性向上が挙げられている。
今回、定山渓温泉街で実施された「定山渓回遊モビリティ実証事業」は、四輪電動ミニカー「EV CLASSIC」と三輪電動シートボード「TOCKLE」を運用することで、この課題に貢献する。同事業は、札幌市、BRJ、定山渓観光協会が連携し、定山渓温泉街における観光回遊の促進と新たな移動体験の創出が目的だ。

ブレイズが手がける「EV CLASSIC」最大の特徴は、1930~1960年代に憧れの存在だったクラシックカーをモチーフにしたレトロなデザインにある。

記念セレモニーでは、「EV CLASSIC」の試乗体験機会も設けられ、参加者からは「移動そのものが観光コンテンツになる」「定山渓の街並みと非常に相性が良い」といった声が上がった。
レトロなEV導入で目指す定山渓の新たな魅力

「定山渓回遊モビリティ実証事業」の実施元である札幌市経済観光局 観光・MICE推進部 観光・MICE推進課に、数あるEVの中からクラシックカーモチーフの同車種を選んだ理由やその狙い、今後の展望について話を聞いた。
バスやタクシーといった従来の移動手段の拡充ではなく、あえてレトロな「EV CLASSIC」を通じた共創に至った背景について、三浦係長は次のように語る。
「今回の実証事業において導入した『EV CLASSIC』は、美しい定山渓温泉街の景色や風を実際に肌で感じながら、移動自体を楽しみつつ周遊できるモビリティです。『アクティビティ』としての特徴を合わせ持ちながらも、写真映えして、定山渓内の観光スポット巡りにも気軽に使っていただける。そんなモビリティを探していた中で『EV CLASSIC』に出会い、今回の共創に至りました」
また、「定山渓回遊モビリティ実証事業」を通じて、温泉や足湯でリラックスしつつ、モビリティを活用してエリア全体を楽しめる街づくりを目指していくという。
そして、「10月中旬頃には、定山渓は美しい紅葉の時期を迎えます。来訪者が最も多くなるこの時期へ向けたプロモーション展開もしていければと考えています。来年度以降の展望については、今年度の成果を踏まえて前向きに検討していく予定です」と期待を込めた。
レンタルサービスの利用条件と詳細案内

観光客が実際に利用できるレンタルサービスは、1時間1,000円、3時間パック3,000円に設定されており、札幌市民向けの割引制度(最初の1時間のみ500円)も用意されている。貸出時間は10:00~17:00。
貸出拠点は、フリルフスリフ(心の里 埜のてらす内)となっており、利用にあたっては普通自動車免許が必要となる。1人乗り専用の車両で雨天時は貸出不可となるが、手軽に周遊を楽しめる設定となっている。

また、次世代モビリティのシェアリング事業を展開するBRJも、定山渓温泉街にて三輪特定小型原付の「TOCKLE」のシェアサービスを提供する。同サービスの利用料金は、30分500円、3時間パック1,500円に設定されており、公式HP記載のクーポンコード入力で30分が無料となる。貸出時間は8:00~19:00。
6カ所のポートが設けられており、利用にあたっての免許は不要(16歳以上)。ヘルメット着用推奨されている。「TOCKLE」アプリをダウンロードし、都合に合わせて各ポートから好きな車両を選び利用開始となる。ポートは、定山渓ビューホテル、定山渓第一寶亭留 翠山亭、山ノ風マチ、定山渓観光案内所、タイムズ定山渓観光駐車場、フリルフスリフ(心の里 埜のてらす内)。

温泉街から少し足を延ばした観光には「EV CLASSIC」、近距離移動やちょっとした観光スポット巡りには「TOCKLE」と、目的に応じて選択できるのも、同サービスの魅力のひとつだ。
SNS投稿キャンペーンによる魅力発信

実証事業のスタートに合わせて、利用者のSNS発信を促す企画も実施された。9月14日(月)までの期間中、車両の写った写真にハッシュタグ「#定山渓EV」を添えてSNSへ投稿した利用者を対象に、定山渓名物の温泉饅頭がプレゼントされるキャンペーンを実施。写真映えするクラシックなデザインは移動手段としてだけでなく観光コンテンツとしても高い魅力を持っており、温泉街の景観とともにSNS上での話題化への期待を込めて行われた。
新型モビリティが描く新たな移動体験と地域観光の未来

採用された「EV CLASSIC」は、公道走行が可能な電気で動くクラシックカーであり、ミニカー登録のため車検や車庫証明が不要という特徴を持つ。家庭用の100ボルトコンセントから充電が可能でありながら、現代の技術による力強い加速力を実現している。

展開元のブレイズは、「定山渓温泉は北海道を代表する観光地であり、その魅力ある街並みや自然環境の中で、当社のEVモビリティをご活用いただけることは大変光栄です。今回の実証事業を通じて、観光客の皆様に“目的地まで移動する手段”としてだけでなく、“移動そのものを楽しむ体験”を提供するとともに、地域観光の活性化や持続可能な観光まちづくりに貢献してまいります。
また、これから迎える行楽シーズンや美しい紅葉の季節において、EV CLASSICで定山渓の魅力をゆったりと楽しんでいただくことで、これまでにない観光体験の創出につながることを期待しております。ブレイズは今後も、全国の観光地や地域社会における移動課題の解決に向け、電動モビリティの新たな可能性を提案してまいります(一部抜粋)」と、思いと展望を述べた。

同事業には、三輪電動シートボード「TOCKLE」も採用された。GPS で走行エリアを検知し、特定エリアに入ると車両をストップさせる安全システム「ジオフェンシング機能」を搭載。加えて、夜間運行の全面禁止など、かなりガードを固めた安全設計が特徴だ。
定期点検・日常点検、ヘルメット貸出に加え、利用前の安全意識確認のため、警察庁と共同で交通ルールテストも制作。さらに、安全講習会や試乗会での交通ルールの周知・安全な利用促進への取り組みも行っている。
展開元のBRJは、「公共交通を利用して訪れる方にはバス停や主要施設からの『ラストワンマイル』における快適な移動手段を、自家用車やレンタカーで訪れる方には『パークアンドライド方式』による域内移動手段を提供します。快適なだけではなく、楽しさも味わえる移動手段を体験いただくことで、観光客の皆様の満足度を高め、地域全体の賑わいにつなげてまいります。(一部抜粋)」とコメントを寄せた。
観光地における移動手段の確保と環境配慮を両立させる同取り組みは、今後の地域観光のあり方を示す先進的なモデルとなるだろう。これから迎える行楽シーズンや紅葉の季節に向けて、風を感じながら定山渓の絶景を巡る体験は、多くの観光客にとって特別な思い出となるに違いない。
■定山渓温泉街
住所:札幌市南区定山渓温泉東3丁目(定山渓観光協会)
定山渓回遊モビリティ特設サイト:https://jozankei.jp/micromobility
定山渓観光協会公式HP:https://jozankei.jp